性能について

良い家ってどんな家?

良い家とは、どんなものでしょう?高価な材料を惜しみなく使い、贅の限りを尽くせば良い家になるのでしょうか?流行の最先端を行くデザイン?それとも電気代の安い家?建築家10人に聞けば10通りの答えが返ってくるでしょう。唯一の正解はありません。しかし、導き出された答は様々でも、その中には良いものに対する共通した価値観が存在するのです。

一見高性能な現代住宅。でも実は…

一見高性能な現代住宅。でも実は…
一言で高性能といっても、実は色々あるのです。ある基準で高性能といえるものも、別の基準でみると全く評価できないものであることもよくあります。車を例に取ってみましょう。どんなに燃費の良い車でも、レースで勝てるかどうかは別問題です。どんなに速く走れる車でも、居住性は決して良くはありません。どんなに居住性の良い高級車でも、人を多く運ぶにはバスにかないません。

 燃費がすべてなら、フェラーリもレクサスも性能が悪い車となります。家も同じです。高気密高断熱の家は電気代が安く済みますが、その他の性能はどうでしょう?また、完成時に高性能だとしても、10年後、30年後、100年後はどうでしょう?短期的な性能と長期的な性能には別の基準が存在するのです。築100年の古民家では冬の断熱性能は期待できませんが、逆に現代の高気密住宅はとても100年も持ちません。ではどちらが高性能なのでしょう?それは、家を建てようとする人が、何を求めるかによって決まるのです。

高気密住宅の落とし穴

耐震性能、断熱性能…住宅に求められる性能は様々です。最近の傾向として、環境問題や省エネを謳った高気密高断熱の家が再び注目を集めています。中には競って数値を向上させようとしている住宅会社もあります。しかし、それで本当に性能の良い住宅ができるのでしょうか?
高気密住宅の落とし穴
かつてシックハウス症候群が社会問題となり、法規制による応急措置でやや改善されたものの、根本的な解決はされないまま現在に至っています。高断熱と高気密とは深く関係しているため、省エネのために住宅の気密性を高めようという試みは、そこだけ見ると順当なのかも知れません。しかし、それにより再び健康が脅かされる危険性が高まっていることは無視できません。

ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)等、国が勧める省エネ住宅も、実は元々経済産業省の施策であり、人の安全を守る国土交通省のものではないことから、目的が違うことを認識する必要があると言えます。そのことを踏まえた上で、自分に合った選択をしましょう。

想像してみてください!

想像してみてください!
「真四角で壁が多く窓が少ない家」…どんなイメージを持ちますか?壁が多くて頑丈そうです。でも、日当たりや風通しはどうでしょう?エアコンの効きは良いかも知れません。でも年中エアコンが必要になりそうです。エアコンが壊れたら?第1種換気で管理していれば空気はキレイ?フィルターの汚れは?…ある人にとっては快適な家かも知れません。また別の人にとってはとても住めない家でもあります。この家は、数値の上では理想的な高耐震高断熱の家なのです。しかし、私は住みたいとは思いません。

住宅の性能を表す10の項目

「高気密高断熱≠高性能」。断熱性能は、住宅に求められる重要な性能の一つです。しかし、それがすべてではありません。高断熱だからといって高性能とは限りません。住宅の性能を表す基準として、国土交通省から10の項目が挙げられています(住宅性能表示制度)。住宅の性能はそれらの組み合わせを考えなければなりません。住宅に求める性能は人によって違うものであり、バランスが重要になります。ある人にとっては最良の家だとしても、別の人にとっては最悪の家になるかも知れません。

1.構造の安定

2.火災時の安全

3.劣化の軽減

4.維持管理・更新への配慮

5.温熱環境・エネルギー消費量

6.空気環境

7.光・視環境

8.音環境

9.高齢者への配慮

10.防犯

今流行りの高断熱の家は、この中の「5.温熱環境」に特化したものになります。断熱性能が優れていても、他の項目も優れているとは限りません。また、すべての項目について最高等級にすることはできません。両立が不可能なトレードオフの関係にある項目があるからです。

「真四角で壁が多く窓の少ない家」は、高耐震・高断熱で高性能な理想の家のはずですが、果たしてどうでしょう?他の項目については疑問が残ります。

地震に強い家

地震に強い家
耐震等級3。現在の耐震基準では最高等級とされています。しかし、実はこの基準は、簡易的に耐力壁の量で定めたものに過ぎません。過去にE-ディフェンス(兵庫耐震工学研究センター)での公開実験で、耐震等級2の長期優良住宅が等級1の建物より早く倒壊する例が報告されました。予想に反する結果に、関係者は苦し紛れのコメントを出していましたが、実はあり得る話です。実験の様子は当局のサイトにもアップされていましたが、都合が悪かったのか、すぐに削除されてしまいました。

ここでは法の甘さを指摘することが目的ではありません。すべてを網羅する完璧な基準を求める方が無理なのですから。むしろ、これまで野放しに近い状態だった住宅設計に対して、不完全ではあるが基準を設けることで、住宅の質の底上げには貢献していると思われます。しかし一方で、基準を満たしているからといって安心はできないということも忘れてはいけません。
地震に強い家
住宅の強度基準には定められていませんが、安心できる家を設計するには、直下率や偏心率、木材の高温乾燥による熱劣化等、考慮すべき項目は沢山あります。あるいは制振装置等の、評価基準にないが効果が期待できそうなもの、これらも含めて総合的に判断するスキルが求められます。

中には、売るために必要な部分だけをうまく汲み上げ、そこだけ数値を上げてあたかも高性能であるかのように騙る住宅会社もあります。決して悪意はなく、知らないだけかも分かりませんが、プロなのですからそれも罪です。コストの問題もあり、あえて取捨選択する場面もあるでしょうが、つくり手と住み手の間での相互理解が必要です。

冬暖かく、夏涼しい家づくり

冬暖かく、夏涼しい家づくり
冬暖かく、夏涼しい…当たり前のように望まれる家づくりです。しかし、捉え方が違うと全く違う家になってしまいます。夏の暑さを軽減し、エアコンの負荷を小さくしようとすると、日当たりの良い南面にはLow-Eガラスを使うことがあります。熱線反射による断熱効果は、夏の日差しを和らげるだけでなく、冬でも室内の熱を逃さず保温効果が期待できるとされています。高気密高断熱の理想の家です。

しかし、四季の移り変わりを五感で味わいたい人にとっては、少々物足りない家になってしまいます。小春日和に日向ぼっこをしても、熱線は遮断され、ほとんど温もりを感じられないのです。夏には風を通して風鈴の音を聞きながら昼寝したくても、窓は閉め切ってエアコンがフル稼働。今時の高気密省エネ住宅は、24時間365日エアコンを点けておくのが良いという説もあるほどです。確かに電気代が安ければ、エアコンにより一年中快適な室温で過ごせるかも知れません。屋内ではヒートショックの心配もないかも知れません。でも、家から外に出る時、どうなるでしょう?最近の子供たちは、ちょっとした環境の変化ですぐに体調を崩すそうです。どうやら今時の高性能住宅も問題がありそうです。

先人たちは、家づくりにも様々な工夫を凝らしました。夏と冬の太陽高度の差を利用し、庇の深さで四季を楽しめる家づくりを可能にしました。また、内と外との境界を曖昧にすることで、空間に多様性を持たせました。いつからか、そんな家づくりは忘れられ、画一的なシェルターが量産されるようになりました。どちらが優れているかではなく、住む人がどちらを望むかが重要なのです。

オーダーメイドの家づくり

オーダーメイドの家づくり
オーダーメイドというと、手づくりで武骨な感じ、あるいはヴィンテージ・アンティーク・レトロといったイメージと重なり、デザインのスタイルと思われがちです。しかし、オーダーメイドの本当の魅力はそこではありません。それは、既成品が生産効率を上げるために売り手の都合で標準化された商品であるに対して、オーダーメイドは買い手の要望に合わせた製品をつくるところにあります。見た目のデザインはもちろん、性能も自由に選べるということです。team半兵衛では、一部に標準化を取り入れることでコストを抑え、高額になりがちなフルオーダー(材半ブランド)のデメリットを最小限に留めます。住む人がどんな家づくりを望んでいるか、それにより出来上がる家も変わってきます。世界にたった一つの自分だけの家づくり。それが本来あるべき注文住宅なのです。